コハルニ

コハルニ クラシ Vol.1 ハジ クラシ

住む人を想定した計画で家を建てた状態で売る、「建売」。

どことなく素気ない言葉に聞こえがちですが、「ハジ クラシ/土師 暮らし」はその言葉の響きを少し違った感覚に変えることができないかという試みです。

まだ出会っていない住み手の暮らしを考えるというテーマは安易なことではありませんが、「ハジ クラシ/土師 暮らし」で大切にしたのは「ほどよい」と感じられる空間。

瀬戸内市長船町土師に位置する南北に細長い敷地は、新旧の住宅や賃貸アパートに囲まれた住宅地である。北側の道路は車の交通量が比較的多く、北西の道路は隅切りであるため、南北の敷地に余白をあけて建物を中心付近に配置することにした。これにより敷地と建築のバランスが落ち着いたように思える。また周囲の建物と人との関係性に繋がりを持たせて、この建築行為が町のひとつの風景になればと考えた。

素朴なかたちの長い箱の中に外部空間を取り込み、限りなくワンルーム空間に近づけようと整理していきました。

外壁に囲われていながら柔らかい光を感じる家族やゲストを迎え入れる前庭のアプローチに足を踏み入れると、玄関扉の横にあるライブラリー棚に設けた正方形の窓の先に木の階段と東側の中庭がゆるやかに視線で繋がります。そしてエントランスから玄関ホールに足を進めると、この建物全体の奥行きや家族の気配を感じ取ることができます。

壁と自然光のバランス、爽やかな風の音、ここから見る星空、子供の声や食卓の匂い、心地よい手触り、のんびりした時間、こんなことをイメージしながら空間に居場所を埋め込んでいます。住まう方の想像力から広がる工夫で心地良く、そして魅力的な、とっておきの居場所をゆったりと暮らしながら、じっくりと見つけてください。

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